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花粉症のメカニズムと対象アレルゲンを知ろう


冬(冬至)から春(春分)にかけては、日照時間が長くなり気持ちが明るくなったり、来年度への抱負が高まったりしやすい時期ですが、悩ましい花粉症の時期でもあります。

花粉症の症状は睡眠と密接に関係があり、夜なかなか寝付けない、寝ても息苦しくて頻繁に起きてしまう、睡眠が浅くて日中眠気に悩まされたりしてしまうという方も多くいらっしゃると思います。2008年に行われたある調査では、実に76.8%の回答者が、花粉症が睡眠に悪影響を及ぼしていると回答しており、睡眠障害に悩まされていると回答しています (#1)。

生活の質にも悪影響を及ぼす花粉症を正しく理解していただき、きちんとした対策を行っていただきたいという観点から、今回はそもそもどうして花粉症が起こるのか、どのような植物が花粉症の原因となっているのかなどについて解説させていただきます。

 

花粉症が起こる仕組み

花粉症の正式な疾患名は、季節性アレルギー性鼻炎や季節性アレルギー性結膜炎といい、その代表的な症状としては鼻腔と呼ばれる部分や、目の粘膜の炎症が見受けられます。

炎症とは、熱を持ち、赤みが出て、腫れ、痛みが出ている状態のことで、花粉症ではこの炎症により、水っぽい鼻水や鼻詰まり、くしゃみ、目の痒みが起こります。

その詳しいメカニズムについて見ていきましょう。

 

メカニズム


※鼻アレルギー診療ガイドライン 2013 年版より(※1)

 

空気中には目に見えない細菌やウイルスがたくさん存在しています。これらの細菌やウイルスには、人体に悪影響を及ぼす種類のものが数多くあるため、人の鼻や眼、のどには細菌、ウイルスが入ってこないようにするための防御機能が備えられており、その働きが免疫反応と呼ばれます。例えば鼻腔は、常に湿り気のある鼻汁が分泌されており、鼻の奥が少し湿った状態が健康な状態です。ここに細菌が侵入してきた場合、免疫反応が起こり、大量の鼻水が分泌したり、くしゃみを出したりして、体の中までの細菌の侵入を防ごうとします。花粉症で鼻水やくしゃみが出るのは、このような免疫反応が原因になっています。つまり、私たちの体は、花粉を人体に悪影響のある異物だと判断しているのです。

しかし、本来花粉は人体にさほど悪影響を及ぼしません。言い換えれば花粉症の発症者は、花粉に対して過剰な免疫反応を起こしているとも言えます。このように、無害な異物(抗原)に対して過剰な免疫反応(抗原抗体反応)を起こしてしまうことを、アレルギーと呼びます。

花粉を浴びたからといってすぐに花粉症を発症するわけではなく、同じ環境にいるのにひどい花粉症になる人もいれば、全くならない人もいます。

身体の中に花粉が入ると、その花粉を排除するための抗体というものが作られます。この抗体は、鼻腔の粘膜などにあるマスト細胞という細胞に結合します。この1.花粉(抗原)が体内に入る、2.抗体が作られる、3.抗体がマスト細胞に結合するというサイクルを繰り返すごとに、マスト細胞に結合した抗体量が増加していきます。この抗体(lgE抗体)量が“一定量”を超えると、マスト細胞は花粉を排除するための化学物質(ヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンなど)を放出するようになります。この化学物質がくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどを引き起こします。

 

花粉症の個人差を生む要素

lgE抗体量の“一定量”には個人差があり、症状が出るまでに数年から数十年かかります。花粉症は複合的な因子により発症することが知られていますが、生まれ育った生活環境や遺伝の要素が大きいと考えられています。アレルギーを起こす物質をアレルゲンと呼びますが、アレルゲンに触れる頻度もアレルギー(花粉症)の発症に影響しています。

各要素について詳しくみていきましょう。

花粉量の増加

戦後すぐの1946~1956年に全国で行われた植林によって、スギ・ヒノキ林が急増しました。患者数や人工林の花粉産生力などから、戦後1950年代に比べ、スギ・ヒノキ空中花粉量が増加したことは明らかだとされています(#2)。スギは植林後約40年で成木になりますが、現在のスギ林の大部分が花粉飛散可能な成木で構成されています。

また、戦後の植林以外に、花粉量の増加を起因する要素として、地球温暖化現象による気温の上昇や樹齢の増加も考えられています。

 

大気汚染

近年、花粉症と大気汚染物質との化学的な関連性が徐々に明らかになってきました。

2005年に国立環境研究所が行なった大気汚染物質の花粉症への影響実験(モルモット実験)によると、ディーゼル排気・オゾン・二酸化窒素のいずれの大気汚染物質においても、高い濃度では花粉症の症状の誘発や悪化助長が示されました(#3)。また、同実験では、アレルギー性疾患の炎症の一因となる「好酸球」(白血球の一種)の増加や、花粉に対する抗体価(抗体の量の指標)の増加も観察されおり、大気汚染物質による生理反応への影響が示されました。

では次にその生理反応への影響を化学的に明らかにした研究を紹介します。

埼玉大学の物質循環制御研究室の研究内容によると、黄砂やPM2.5などの大気汚染物質は、花粉と接触すると花粉の分離を助けアレルゲン物質放散を助長します(#4)。花粒(花粉の粒子)は、そのままのサイズでは呼吸器系深部にある肺胞に到達できませんが、花粉の分離を経て直径1.0ミクロン以下の微小サイズ(PM1.0)になり肺胞に到達します。この花粉の分離は自然界でも2割程度生じますが、大気汚染物質との接触時には8割程度にもなるとのことです。接触時に大気汚染物質も微小サイズ(PM1.0)になることから、大気汚染が進むと、花粉のアレルゲン物質だけでなく有害な大気汚染物質までも体内に取り込みやすくなってしまいます。

 

遺伝や生活習慣

近年では、子供でも花粉症になるケースが増えており、5~9歳の5人に1人が花粉症と言われています。花粉量増加の影響もありますが、遺伝の要素や乳幼児期の環境が大きく影響していると考えられています。

アンケートによる子供と親の花粉症調査では、花粉症の子供(0~16歳)の親の約85%が花粉症という高い数値となり、また花粉症と副鼻腔炎を併発している子供は大人の45%を凌いで56%という結果でした(#5)。

子供は、両親の遺伝形質を半分ずつ引き継いでいるため、親の体質と似ることになります。親が花粉症だと子供も花粉症になりやすいのはそのためです。

ただ、遺伝だけではなく、アレルゲンへの接触に関わる生活空間や食生活などの習慣もほぼ同じになるため、後天的に親と体質が似ることで、花粉症になりやすい側面もあります。

幼少期における症状の重い花粉症は、脳や体の成長に重要な睡眠の質や日中の集中力の低下などに影響するため、なるべく子供が幼いうちから花粉症の予防を行ったり、疑われる症状が出た際は早めに診察を受けたりするのが良いでしょう。

 

食生活の変化

花粉症の原因としては、食生活の変化(欧米化)も挙げられます。

私たちの食生活は、昔に比べてガラリと変わりました。例えば、年々お米を食べなくなっています。年間1人あたりの米消費量は、1962年の約120キロをピークに、1990年には約70キロ、2005年には約60キロ、2016年には約55キロと一貫して減少しています(#6)。

昭和40年以降の食の欧米化により、和食の基本である一汁三菜に比べ、動物性の脂質やタンパク質の摂取量が増加しました。若年層ほど肉類からのタンパク質摂取割合が高くなる傾向にあります(#7)。過剰なタンパク質摂取は、過剰に免疫機能が働くため、花粉症の症状を重くする可能性があります。

また、野菜に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維は、体の調子を整える作用があります。厚労省が提唱する1日あたりの野菜摂取量の目安は350gですが、外食やコンビニ弁当などの中食が多い方は、野菜不足になりがちです。

魚介類やきのこ類に多く含まれるビタミンDは、免疫調整の働きがあります。ビタミンDが不足すると、正常に免疫機能が働かずアレルギーを発症しやすくなります。ビタミンDは、食べ物からの摂取以外に、紫外線(日光)の照射により体内で生成されます。日光を浴びることは睡眠にも深く関係しており、朝日光を浴びることで体内時計がリセットされ覚醒が促進されるメリットもあります。

 

抗生物質の使用

「過剰医療大国」と言われるほど、慢性的に日本の医療は過剰に検査や投薬をしているようです。

ほとんどの風邪には抗菌薬(抗生物質)が効かないことは、医者の間では常識だ。風邪の原因の9割はウイルス感染症とされるが、細菌に効き感染症の治療にかかせない薬である抗生物質はウイルスにはそもそも効かない。・・・「抗生物質が風邪の特効薬だと誤解している患者はまだ多い。『なぜよく効く薬をだしてくれないのか?』といぶかしげな表情で迫られると、つい経営のことも考えて希望どおりに処方してしまう」

過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実、東洋経済オンラインより(※2)

当たり前になりつつある手厚い医療に対して、厚生労働省は、軽い風邪や下痢の際には抗生物質の使用を控えるように勧めています。

抗生物質依存への警告は、医療費増大への対処や医療機関の人的リソースへの負荷低減目的もありますが、第一に服用者の健康への影響を鑑みて発せられています。

2019年サウスカロライナ医科大学究者により、抗生物質による腸内細菌叢(さいきんそう)の破壊が思春期の骨格発達の調整不全を引き起こすことが示されました(#7)。

また筑波大学の研究により、腸内細菌のバランスの乱れが喘息を悪化するメカニズムが解明されましたが(#8)、腸内細菌の破壊やバランスの乱れは、花粉症悪化に関係していることが示されました。

花粉症に限らず健康のために、必要以上の抗生物質の使用は控えた方が良いと思われます。

 

花粉症のアレルゲン対象について

花粉症を引き起こす植物

 

花粉症の元となるアレルゲンはスギ花粉が有名ですが、その他にも日本には60種類以上の花粉があると言われ、通年を通して飛散しています。季節ごとでは以下の花粉が代表的です。

花粉症と言えば春のイメージが強いですが、このように一年を通して、花粉症の元となるアレルゲンは飛散しています。春以外は、花粉症症状が出ても風邪と勘違いしてしまうこともありますが、通年の花粉症対策が必要となります。

▪️ 春:スギ、ヒノキ

▪️ 夏:イネ科植物、カバノキ科植物

▪️ 秋:ヨモギ属、ブタクサ属などのキク科植物、カナムグラ

▪️ 冬:スギ

このうち、スギ・ヒノキ・カバノキ科植物が木本にあたり、イネ科植物・ヨモギ属・ブタクサ属などのキク科植物・カナムグラが草本にあたります。草本に比べ木本の方が、単位面積あたりの花粉量(個/cm2/日)が一桁多くなります。

毎年の花粉の飛び始める時期は、気象条件や地域により少しずつ異なります。例えば、スギ花粉の飛散量は前年の夏の気象条件に左右され、具体的には日照時間が長く降水量が少ない気温の高い夏ほど飛散量が増加します。

 

花粉が飛散しやすい環境

 

花粉症の原因となる植物が、花粉を飛散できるようになり、更に次のような気象条件が揃うと花粉が非常に多く飛散することが知られています。

▪️ 晴れていて気温が高い

▪️ 空気が乾燥していて風が強い

▪️ 雨が降った翌日

花粉症の原因になる植物のほとんどは、風を媒体に受粉する風媒花であり、その特徴としては、多量の花粉を生産することや、風に乗って遠くまで運ばれやすい花粉であることが挙げられます。

晴れて風が強い日は、風媒花にとっては好適な花粉飛散日になります。逆に、雨天や湿度の高い日は、花粉の水分量と重量の増加で、浮遊し続けることが難しくなるため花粉量が減ります。

 

さいごに

本記事では花粉についてのメカニズムや花粉症が多くなった原因、花粉症を招く植物についてご紹介させていただきました。次は、この内容を踏まえ、症状や対策(医療機関での処方やセルフケア)について見ていきましょう。

 

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<参考>

#1: 岡本美孝、他. Prog.Med 28,,2008

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10905100-Kenkoukyoku-Ganshippeitaisakuka/0000121254.pdf

#2:  空中飛散スギ,ヒノキ花粉数の最近の年次推移,奥田他,アレルギー55(12),1531-1535,2006

https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/55/12/55_KJ00004480445/_pdf

#3: 花粉症(1) 症状を悪化させるもの, 国立環境研究所

https://www.nies.go.jp/fushigi/050504.html

#4: 花粉症と大気汚染の原因物質との関連性を化学的に解明,  国立大学56工学系学部ホームページ

https://www.mirai-kougaku.jp/eco/pages/150727.php

#5: いまや“国民病”?! 花粉症の症状 に悩む、 “20~79歳までの男女” “0~16歳までの子どもの母親”に聞いたアンケート結果発表、ロート製薬

https://www.rohto.co.jp/~/media/cojp/files/pdf/news/kafun_1712.pdf

#6: 米をめぐる関係資料、農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/180727/attach/re_data3.pdf

#7: Unintended side effects: antibiotic disruption of the gut microbiome dysregulates skeletal health,

https://medicalxpress.com/news/2019-01-unintended-side-effects-antibiotic-disruption.html

#8: 腸内細菌のバランスの乱れが、喘息を悪化させるメカニズムを解明

—新しい発想のアレルギー治療へ—、JST

https://www.jst.go.jp/pr/announce/20140116/index.html

<引用>

※1: 鼻アレルギー診療ガイドライン 2013 年版

※2:  過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実、東洋経済オンライン

https://toyokeizai.net/articles/-/221458

 

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