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第8条 スマホなどの電子機器を排除する

西野 精治

医学博士/米国スタンフォード大学医学部精神科教授

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医学博士/米国スタンフォード大学医学部精神科教授/スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長/日本睡眠学会睡眠医療認定医/株式会社ブレインスリープ 最高経営責任者(CEO), 最高医療責任者 (CMO)/Jornal Sleep編集委員/著書:スタンフォード式最高の睡眠 など多数

帰宅後から就寝前まで、スマホやPC、テレビから離れるのはなかなか難しいことと思います。特に直ぐに寝入れない時、ついついスマホを手に取ってしまう人も多いのではないでしょうか。実はその行為が睡眠をさらに妨いでしまっています。その詳しい内容について見ていきましょう。

【約4分でわかる本記事の要約動画】
※音声あり

 

就寝前のスマホは逆効果

 

 

仕事や余暇、プライベートで寝る直前までスマホやPCなどの電子機器類を触ってしまいがちですが、就寝前は我慢してブルーライトを発する電子機器類を見ないようにしましょう。また、部屋は明るくせず、間接照明などを活用して照明を抑えることをお勧めします。

 

ブルーライトは避けるべき理由

 

 

強い光であるブルーライトを浴びる(人の網膜で約470nmの波長の光を感知する)ことで、睡眠ホルモンと呼ばれる“メラトニン”の分泌が抑えられ、覚醒状態に移行してしまうためです。

因みに、目に見える波長(可視光線:約400〜800nm)(※1)は、赤色(赤外線)に近づくと長波長に、紫色(紫外線)に近づくと短波長になりますが、ブルーライト(青色系の光)は短波長となりエネルギーが強いため網膜まで到達しやすい光です。一方、赤色に近い(超波長の暖色系の)光は、角膜や水晶体で吸収されやすく網膜まで届きにくくなります。また、人の網膜には3つの光受容細胞(錐体細胞、桿体細胞、メラノプシン発現神経節細胞)がありますが、最後のメラノプシン発現神経節細胞に、強い光であるブルーライトが届くと、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌抑制機能が働くようになり、その結果、眠りを妨げます。動物などではブルーライトそのものが覚醒効果をもたらすことが確認されています。

蛍光灯や太陽光にもブルーライトが含まれますが幅広い波長の光を放射するのに対して、多くの電子機器に用いられているLEDはブルーライトの占める割合が非常に高いため、LEDが使用されている電子機器は就寝前にはなるべく使用を避けるべきです。

光は、その活用の仕方次第で睡眠にとって毒にも薬にもなります。即ち、覚醒にも効き、睡眠にも効くということです。日中や眠気を遠ざけたい時には、LEDをはじめ強い光を受けると覚醒しやすく活動的になります。例えば、ナイターのスポーツでは、眩しいくらいにライトを照らしていますが、単純に明るくする以外に、選手・観客ともに覚醒状態になりやすくなる効果があります。大切なのは、光を浴びる時間とタイミングです。特に、強い光は生体リズムを乱すため、上手に使い分けることが大切です。10年近く前になりますが、JR各社をはじめとする多数の鉄道会社が、自殺抑止対策として駅のホーム端や踏切に青色灯(ブルーライト)の設置を進めていました。ブルーライトには覚醒だけでなく抑うつ効果もある可能性があります。

 

電子機器を使うならなるべくブルーライトOFF機能を使用

 

携帯やパソコンには、ブルーライトを軽減する機能(夜間モード)が備わっていることが多いです。使ったことがない人は一度確認してみて下さい。また、デフォルトで備わっていない場合も、無料アプリで利用できます。

 

よくある駄目なケース

 

 

寝る前に電気を消して真っ暗な部屋でスマホを近距離で長時間使うことは、睡眠にとって非常に良くないため、そういった習慣のある方は今日から辞めることをお勧めします。なぜなら、これはブルーライトの影響力を強める行為であるためです。今から寝ようとしているにもかかわらず、ブルーライトによる交感神経の刺激を増長してしまい、覚醒モードになって暫く眠れない状態になってしまいます。

また、長時間の使用は、ブルーライトは強い光であるがために、網膜への影響(網膜の中心部にある黄斑へのダメージ、強いては加齢黄斑変性の発症可能性の上昇)(※2)や眼への影響(眼精疲労やドライアイ)(※3)などを招きやすいため、定期的に休憩を取り、就寝時間に近づくにつれ使用を徐々に減らすのが理想です。

光照射の問題は、タイミング、照度・波長、時間により影響が異なります。ブルーライトを夜間に浴びることは、タイミングは最悪で、しかもスマホでゲームやメールなどを送受信すると頭が興奮しさらに入眠が困難になります。

 

明る過ぎる日本の照明

 

 

アメリカと比べて、日本はレストランやホテルなど夜でも照明がかなり明るいようです。家庭においても、日本では蛍光灯やシーリングライトで部屋全体を明るくするのが多いのに対して、アメリカでは蛍光灯やシーリングライトを使わずオレンジ系の間接照明だけにすることが多いそうです。それは、アメリカの方が、“家は家族団らんやリラックスする場所”という認識が強いことと、白人系の目の色素が比較的薄く、光をより眩しく感じるためと考えられています。可能であれば、帰宅後体が自然と睡眠へ向かうように、リラックスできる照明にすると熟睡するのに効果的です。また、寝る際に、頭元の照明を付けたままにする方もいますが、照明を付けたままにせず暗くすることをお勧めします。それは、一般的な夜光(約10ルクス)でも、メラトニンの合成・分泌阻害を引き起こすと考えられているからです。目に入る頭元の照明でなく、小さなフットライトにするなどの工夫をしてみては如何でしょうか。

 

※1: ブルーライト研究会、ブルーライトとは

http://blue-light.biz/about_bluelight/

※2: Biological effects of blocking blue and other visible light on the mouse retina.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24304494

※3: Effect of Blue Light-Reducing Eye Glasses on Critical Flicker Frequency.

https://bit.ly/2CRvqGw

 

(writer: SleepediA編集部)

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